NO.9｜ときどき日記

たぶんここに来るまで巻ちゃんは一人でいっぱい悩んだんだろうな～。
誰にも相談しないで。たぶん家族とは「３月までなんとかならないか」って話し合いぐらいしただろうけど、最終的に一人で心を決めたんだろうな。自分で納得してみんなと違う方向に一歩踏み出す決意をしたんでしょうね。
それが自称リアリストの巻ちゃんにとって、最も合理的で将来性がある選択だったのだと思います。

最後まで自分の口から別れを告げなかったのは、もう変えられない選択について泣かれたりするのが嫌だったのだと思う。湿っぽい別れは苦手そうだし。
自分の意志がどうあっても曲げられないものとわかっている人だから、先輩に隠れて一人で練習していたのと同じように全部隠していたんだろうし。
寂しいけれどもう心の整理はついている、という感じがしました。
「オレはいつでもおまえと走ってるショ」って、彼はすでにそのイメージをはっきりと胸に抱いてるんですね。まだ目の前にいるけど、もう。
どんなに遠く離れても坂道を見守りながら前を走る巻ちゃんは、尽八とは心の中で並んで走ってるんじゃないかな、と相方が言ってました。
競い合い高め合ってきたライバルが隣にいて、振り返ると頼りになる後輩がいて、チームメイトたちがいて……という心象風景を想像したら幸せすぎてちょっと泣きそうになりました（勝手に想像しすぎました）。

いつも誰かに追いつきたい気持ちで速くなる坂道は、次のステップに行くとき必ずこの日のことを思い出すはず。巻島さんの背中を追いかけ、彼の言葉に背を押されて強くなる。
それがたくさん夢を見させてくれた後輩への置き土産。
「リアリストの巻ちゃんが贈った、夢みたいに心強い言葉だよね」とリバナがとてもいい表現をしてました。
巻ちゃんの前には新しい登り坂があるんだなー。
３年生たちは半年後にはそれぞれの道を歩んでいくけど、一歩先に出発した巻ちゃんは誰より早く高いところに行ってほしい。尽八はムキになって追いかけるといいよ！　違う道でも互いの成果に刺激されあって高い高い山を登ったらいい。
先輩後輩も、十代の頃のライバルも親友も、同じ眩しい記憶を分かち合っている人たちは一生つながってる。

それにしても「自転車は楽しいかァ！？」っていう巻ちゃんがものすごく楽しそうで、「はい！！」って力一杯坂道が応えてるのがあーもーほんとよかったな～って。あの場面は胸に迫りますね。ぐっとくる。
本当に本当に巻ちゃんは自転車が好きで、登るのが楽しくて、幸せだったんだなって。目頭が熱くなる。
最後の登りが一人じゃなくてよかった。坂道がああいうときだけ勘のいい子でよかった。ありがとう坂道！
「おまえの前を走ってる。だから抜け。強くなれ」っていうときの切ない表情が、もう坂道たちと一緒に走れないことへの寂しさなのか、ロードレースそのものをやめる寂しさなのかどっちなのかなって思うんですが（もちろん趣味としては続けるだろうけど、兄を手伝いながら大学に行くのではさすがにレースに出るような余裕はないのかな）、自転車を降りるときが来たということだったら、本当に切ない。寂しい。
だけど、事故や怪我で夢を諦めたといった悔いの残る形ではなく、能力の限界を感じたからでもなく、新しい道に進むための旅立ちだったことがほんと心強くて安心しました。
「笑って去ろう」と自分に言い聞かせた巻ちゃんが、最後の登りで心から笑えてよかった。
海を見下ろすきらきらした景色で彼の高校生活が締めくくられてよかった。

※注：ここから↓はほぼ独り言です（めんどくさいので読まなくていい種類の）。

しかしまさか9月からいきなり大学生とは。
海外の高校に編入して受験勉強をはじめるのかと思ってたら、一足飛びに大学生。びっくり！
受験を控えた3年生だから残り少なかったとはいえ、半年分の単位を8月中に全部取得してイギリスの大学に進むって、尽八の「戦略的で理知的」に匹敵する、というかそれ以上に驚いたかもしれない。普通に向こうの授業についてけるってことだよね。
ちょっとお勉強が苦手な子たちだと思っててごめん、二人とも。
いざとなったら集中して勉強することもできて、兄の仕事が手伝えるということはたぶん日常会話程度の英語には困らなくて、お金持ちのご子息で、日本の高校生で一、二を争う登坂力があって、ひたむきに努力することもできて、なおかつあの美人。
どんだけ高嶺の花なの巻ちゃん。その巻ちゃんが惚れた尽八はどれだけ格好いいの。どんだけハイスペックなの、あの人たち……。

でもってそれだけ巻ちゃんのポテンシャルが高いってことは、東巻はますます盤石だな！　と意を強くしたり。
3年の追い出しレースというのに巻ちゃんがいなくて尽八はしょんぼりしたり、何も言わずに去られたことに（たぶん前もっては言いませんよね、あの様子だと）傷ついたり腹を立てたりするだろうけど、巻ちゃんの選択だから最終的には全力で応援すると思う。
巻ちゃんの人生は巻ちゃんのものだから。
黙っていなくなるなんて薄情だぞとか、もう一緒に登れないなんて嫌だとか、一瞬はだだをこねるかもしれない。けど、いつまでもぐずぐず言うほど子供じゃない（3年は全員現実的な進路を考える時期が来てるし、尽八には先々の展開を読む頭があるし）。
あの人たちはお互いに惹かれ合い尊重し合っているけれど、決して依存し合ってはいない希有な組み合わせだから、相手の人生を自分の都合や感情で変えようとしたり、所有しようとしたりしない。東巻のそういうところがほんと好きです。
まあ、たびたび電話で起こされて、「時差を考えろショ、東堂……」って文句言ったりすることぐらいはあるかもしれませんが。

本編で巻ちゃんの姿が見られなくなるのは残念だし、ものすごく寂しいけど、インハイが終わって新章になったら即新年度（3年が卒業してた）とかだったらどうしよう、と思ったりしてたので、旅立つ姿が見られてほっとしました。
田所金城とハコガク3年たちも卒業する姿をしっかり見せてもらえるといいな～。
残り半年でまだまだ色々あるのかな。だったらいいな。
そのたびに報告を受ける巻ちゃんのことを想像できて楽しい。

今回どこもかしこも巻ちゃんが格好良くて美人で可愛いので（言うことも心震える上に、「ショ」が少なかったからかいつも以上に直球で男前だった）、全然感想がまとまらない……「コワイでいいよ！」てなにあれ超可愛い……とにかく巻ちゃんは凄いな、好きだな、素敵だな、と。彼の前途に幸あれ！
あと、置いていかれないように頑張って尽八！
「あの、また今度でいいですか？」「ああ」のところも好きだな～。胸が痛い。
あの人黙って身を引くタイプだから、尽八はほんと頑張って追いかけないといけない。そこはなかなか大変そうだけど、とにかく頑張れ若者よ。
イギリスの学友に「なあ、日本ってニンジャがいるんだろ？」と聞かれて「あー……知り合いにひとりいる」と答える巻ちゃんをいまから想像しています（そして忍者の仮装をした写メを送ってくれと言われる尽八。『森の忍者ってどんなんだ！？』とうっかり荒北たちに相談してなぜか仮装大会がはじまってしまうハコガク）。
どうでもいい方向に想像が広がっている……。

うん、とにかく巻ちゃんが楽しそうに登ってたことと、自分たちの思いを託せる後輩がいて幸せだなってことが、切ないけど嬉しかった。
幸せな高校生活だったことが嬉しい。
あ。これが卒業前でよかった気もします。巻ちゃんの性格だったら、進路の違う同級生や後輩たちに黙って渡英してたかもしれない。気がついたらいなくなってたかもしれない。
巻ちゃんなりにきちんと自分のあとを継ぐ後輩に別れを告げることができてよかった。
別れは寂しいしつらいけど、学生でいる以上絶対に卒業は来るものだから、それがよく晴れた夏の日で本当によかった。明るい旅立ちでよかった。
涙が出そうになるけど、眩しくて素晴らしい回でした。